ゲイの出口は、ストレートの小野田に恋をした。三年、ずっと気持ちを隠して友達の顔で隣にいたのに、小野田が突然、男を好きになったかもしれないと話し始めて……。
不朽の名作BL『どうしても触れたくない』のスピンオフ作品『それでも、やさしい恋をする』をご紹介します。
『それでも、やさしい恋をする』とは?ストーリーや作者
『それでも、やさしい恋をする』はヨネダコウさんによるBLコミックです。2014年に大洋図書 H&C Comics CRAFT SERIESより、『どうしても触れたくない』のスピンオフ作品としてリリースしました。
ゲイの出口は、友達づてで出会ったストレートの小野田に恋をした。恋が成就する可能性のない相手に告白する勇気はなく、けれど諦めきれないまま友達の顔で隣にいて3年。小野田に、かつて出口と同じ会社にいたゲイの嶋を好きになったかもしれないと聞かされて……。
作者のヨネダコウさんは多くのBLコミックを刊行し、いずれも大ヒットを記録している人気の作家さんで、同人活動にも精力的です。『それでも、やさしい恋をする』は『どうしても触れたくない』のスピンオフとして同人誌で発表したものを再編集した作品です。
『それでも、やさしい恋をする』の魅力
『それでも、やさしい恋をする』で描かれているのは、ノンケに恋してしまったゲイの切ない片想いです。ゲイである出口は、友人づてで知り合った三歳年下の小野田に恋してしまいます。
小野田は彼女もいるノンケ。ゲイだと知り合いにカミングアウトしていない出口は、小野田の隣に友人として居ることを選びます。けれど想いは消えず、小野田の彼女の話を聞いてもやもやしたり、別れたと聞いて喜んでしまったり。
そして、今気になっている相手が男だ、けれど同時に失恋した、と聞かされてドキドキしてしまう出口。恋をしているとき、些細なことで喜んだり悲しんだりするのはゲイだって当然同じ。けれどきっと、告白する勇気は何倍も必要で、出口はその勇気を振り絞ります。
読み終わったあと誰かに恋をしたくなるような、繊細な心の動きの描写が魅力の作品です。
私が『それでも、やさしい恋をする』を読んだ感想5つ
私は『それでも、やさしい恋をする』を読んでオススメしたいと思ったポイントを5つご紹介します。
①ゲイをカミングアウトせず暮らす出口の想いがせつない
出口が勤める会社のシステム課には、ゲイと噂される嶋という男がいた。ゲイを理由に周りから心無い扱いを受ける姿に、出口はそれはゲイだからではなく、嶋自身に問題があるのではと考える。なぜなら、出口もゲイだが、周囲とうまくやっている自信があるからだ。
周囲にカミングアウトはせず、特定の相手も持たずに、ネットなどで知り合った相手とセックスして性欲を処理。そんな生活を送っていたある日、ノンケの友人との飲み会で3歳年下の小野田と知り合う。
穏やかな小野田の隣にいることがなんとなく気に入ってしまい、以降、頻繁に小野田と飲みに行く出口。昼夜問わずセックスに明け暮れていた生活から、すっかり健全な生活へ変わったときにはもう、小野田に想いを寄せてしまっている自分に気付いていたはずです。
②ノンケの小野田と、男同士だからこそ許される距離感
男同士の友人として、頻繁に飲みに行く関係になった小野田と出口。しかしある日、駅のホームで彼女と手を繋いでいる小野田を目撃してしまう。彼女の存在に、そっか、あいつも女とキスしたりするんだよな、と改めて実感する出口。
そんな中、社内でゲイと噂されている嶋の相手がノンケだと知り、出口は憤りを感じてしまう。自分はノンケを、小野田を好きにならないよう必死にブレーキを掛けているのに、どうして嶋は……。
友達として隣にいたら、小野田はあの彼女のように、手を繋いでも許してくれるだろうか。わがままを言って困らせたりしても、笑って許してくれるようになるだろうか。ブレーキはかけていても、求めてしまうことは止められない。出口のモノローグがせつないです。
③小野田が気になる相手は男。一筋の光にすがるような告白
いつものように小野田と飲んでいると、彼は突然、嶋俊亜紀を知っているかと聞いてくる。嶋は元々出口と同じ会社にいたが、ゲイであることがばれて周囲から心無い扱いを受けて退職していた。その後、小野田の会社に入社し今は部下だという。
小野田はそんな嶋を「かわいい」と思い、好きになってしまったかもしれないと出口に相談してきた。嶋には既に彼氏がいるため、好きを自覚したと同時に失恋したも同然だったが、聞いてくれてありがとうと小野田は笑う。
もし、小野田に少しでも男を好きになる可能性があるのなら。一筋の光が見えた気がして、出口は小野田に告白する。しかし、小野田は「ありえませんって」と、その告白を冗談とみなして笑うだけで、出口もそのままはぐらかしてしまう。
一筋の光が見えた、と一気に体温が上がったり、冗談だと受け取られてそのままごまかしてしまう気持ち。それらがせつなく胸に伝わってくる描写を、ぜひ感じていただきたいです。
④告白の返事は? その後の二人にも注目
出口の告白が本気だと気付いた小野田は「前向きに検討させてください!」と、気持ちを整理する時間をもらうことに。小野田は出口のことも「かわいい」と感じていたが、それは出口からの好意を知っているからではないか、と悩んでしまう。
これまで友人の一人だった出口を、恋人として想っていくことが自分にはできるのか。それを悩みながらも、出口の家で飲んでいた小野田は、出口が適当な相手とセックスしていることを知り激昂してしまう。
どうして、他の誰かとセックスしていることに苛立ってしまうのか? 本当はもう、その理由に気付いているのに踏み出せない小野田。その一歩を踏み出せたのは……。結末はぜひ、読んで確かめてみてください。
⑤ドラマCDもやさしく、せつない雰囲気そのままに
『それでも、やさしい恋をする』はドラマCD化もされており、出口を野島裕史さん、小野田を森川智之さんが演じています。
2枚組で100分を超える作品ですが、原作の持つ空気感とキャストの演技がぴったりマッチしており、没頭して聞けてしまいます。出口と小野田が2人で会話しているシーンが多いのですが、その時々で変わる出口の心情にあわせて声のトーンが少し違うのが印象的です。
セリフやモノローグは原作でも力のある言葉たちでしたが、音になることでより奥行きが増し、心に訴えかけてきます。おだやかでやさしく、せつない雰囲気をぜひ、聴いて堪能してください。
『それでも、やさしい恋をする』が読める電子書籍サービスは?
Kindle
イーブックジャパン
ブックライブ
紀伊國屋書店
リーダーストア
まとめ:ゲイであることを伏せて、友達として隣にいるせつなさ。『それでも、やさしい恋をする』
『それでも、やさしい恋をする』はヨネダコウさんによるBLコミックです。『どうしても触れたくない』のスピンオフ作品として同人誌で発表したものを再編集し刊行されました。
ゲイの出口は、飲み会で知り合った3歳年下の小野田に恋をしてしまう。ノンケの小野田が自分を好きになることをないと思いつつも、友達として隣にいることを選んでしまう出口。しかし、小野田が突然、男を好きになったかもしれないと言い出して……。
作者のヨネダコウさんは、数々のBLコミックを刊行している人気の作家さんです。不朽の名作『どうしても触れたくない』に続き、こちらも名作の呼び声高いスピンオフ作品『それでも、やさしい恋をする』をぜひ読んでみてください。
