システム課で課長を務める外川の部下として配属されてきた嶋は、顔はきれいだが置物のように表情がない男。他人に興味がなさそうに見える嶋だが、外川は彼の視線が時折自分を追っていることに気付き……。
ノンケ✕ゲイのせつない珠玉の恋物語『どうしても触れたくない』をご紹介します。
『どうしても触れたくない』とは?ストーリーや作者
『どうしても触れたくない』はヨネダコウさんによるBLコミックです。2008年に大洋図書ミリオンコミックス CRAFT Seriesより刊行しました。
システム課で課長を務める外川の元に、部下として配属されてきた嶋。嶋は顔はきれいだが置物のように表情がない男で、それとなく気にかけていた外川は彼の視線が時折自分を追っていることに気付く。嶋はゲイで、密かに外川に好意を寄せており……。
作者のヨネダコウさんはこの『どうしても触れたくない』が初コミックス。初コミックスながら幾度も重版される大ヒットとなり、ドラマCD化や実写映画化などメディアミックスもされました。次々と大作を生むヒットメーカーとして、多くのファンに支持されています。
『どうしても触れたくない』の魅力
『どうしても触れたくない』の魅力は、登場人物それぞれの心情のリアルさにあります。刊行当時、さまざまなレビューサイトで目立ったのは「ゲイが読んでも泣ける」というコメントでした。
嶋はゲイで、それが原因で前勤めていた会社を辞めています。その時好きだった男はノンケで、もうノンケはごめんだと思っていたのに、次の会社で出会った外川に惹かれてしまう。けれど、ノンケの外川のことを本気で好きになるのはこわい……。
普通の男は、ゆくゆくは家族を持ちたいと思うものだ、と嶋は強く思っており、更に外川にはそれを強化するような過去も。それでも、思い合ってしまった二人がどう心を近付けていくことができたのか。繊細な心理描写がおすすめの作品です。
私が『どうしても触れたくない』を読んだ感想5つ
私が『どうしても触れたくない』を読んでオススメしたいと思ったポイントを5つご紹介します。
①もうノンケに恋をしてはいけないのに。ゲイである嶋の葛藤がせつない
ある会社のシステム課で課長を務める外川の元に、部下として新たに配属されてきた嶋。顔は綺麗だがどこかそっけない態度をとる嶋に対し、外川は嶋が自分だけを妙に意識していることに気付いてしまう。
それがどんな意味を持つのか確認するように嶋に触れた外川は、赤くなりうつむく嶋の想像以上に可愛い反応にどきりとする。顎を掬って顔を上げさせ、キスをした外川は、そのまま家に連れ込みセックスに及んでしまった。
セックス中の外川の態度から、外川はゲイではないと見抜いた嶋は、自分はノンケはもう懲りてると説明し距離をとりたがる。しかし、そのままずるずると関係を続けてしまい……。
前職をやめたのもノンケとこじれたからという理由がある嶋は、同じくノンケである外川に惹かれてはいけないと頭では分かっています。けれど、惹かれるのを止められないのも事実。言葉では語らず、嶋の視線や「喋らないこと」から読み取れる葛藤がせつないです。
②過去の事件を知り、ますます本気になってはいけないと考える嶋
外川の部屋に家族写真を見つけた嶋は、ある事件をきっかけに外川以外の家族は全員亡くなっていると聞かされる。過去の出来事だからとなんでもないことのように話す外川は、同じくなんでもないことのように「正直家族ってもんにはちょっと憧れんだよなァ」と零す。
「外川さんはいいお父さんになりそうですよ」と返事をしつつ、そろそろ帰ろうと腰を上げる嶋。一見、なんでもない会話をしているように見えるが、嶋はずっとうつむいたままで……。
かつて付き合った男は、ノンケであるのに嶋をどうしようもなく好きになり、男を好きな自分が受け入れられず葛藤していた。それを思い出し、ノンケである外川もいつか同じことになるのではと恐れ、どうしても受け入れられない。
外川を好きになってはいけない、けれど拒めない……。嶋の葛藤がモノローグで訥々と語られていくのが、じわじわと不安が拡がっていくようで苦しくなります。
③外川の告白を必死に断る嶋。傷付け合ってしまう二人のゴールは?
京都に転勤することになった外川は、嶋に好きだと告げる。しかし、嶋はその告白を拒絶。理由を問われ、外川が家族というものに憧れているという事実が、ゲイである自分には重くのしかかって来ることを吐露してしまう。
必要以上に怯えてしまうのは、嶋が同じようにノンケの彼氏を我慢させてしまい別れた過去があるから。そして、外川が家族というものに憧れるのも、家族を亡くした過去があるから。過去はどうやっても捨てられない、と嶋は拒絶を繰り返す。
最後だといってセックスをし、別れる二人。外川も転勤しそれぞれの暮らしを始めるが、頭を占めるのはお互いのことばかりで……。ここから二人がどういった結論を出し、どんな結末を迎えるのかは、ぜひ読んで確かめてみてください! 感動間違いなしです。
④原作の雰囲気そのままに、シンプルな掛け合いが美しいドラマCDもオススメ
『どうしても触れたくない』はドラマCD化もされており、嶋を野島健児さん、外川を石川英郎さんが演じています。2枚組で原作を余すところなく音声化しているほか、原作の続編『それでも、やさしい恋をする』収録の「after 9 hours」も音声化されています。
普段の嶋の神経質そうな喋りと、不安を吐露する弱々しさのギャップは音声で聴くとより心に迫るものがあります。また、外川が本当にそこに居る上司のような、自然でリアルなトーンで喋るので、いっそう「ゲイとノンケ」の違いを感じせつなくなります。
「after 9 hours」は外川の部下で嶋の上司にあたる小野田と、元々嶋がいた会社に勤めている出口の物語。出口を野島裕史さん、小野田を森川智之さんが演じています。
こちらも二人の恋の芽生えを描いたものですが、ノンケとゲイのやりとりでうまれるすれ違いがさりげなく、せつなく描かれています。原作を読んでハマった方にオススメできるドラマCDです!
⑤待望の実写映画化は実力派舞台俳優陣の起用で引き込まれる出来!
『どうしても触れたくない』は実写映画化もされており、嶋を米原幸佑さん、外川を谷口賢志さんが演じています。
日常の中で少しずつ浮き彫りになっていく外川の家族への憧れや、ゲイである嶋の負い目。それを原作の持つ、静かでおだやかな雰囲気をそのまま映像にしているような印象を受ける作品に仕上がっています。
ゲイであることを話すとき、嶋がちょっと周りを気にしたりするなど、マンガではコマとコマの間で行われているであろう仕草にもぐっときます。原作が好きな方も楽しめると思いますので、こちらもぜひ触れてみてもらいたい作品です!
『どうしても触れたくない』が読める電子書籍サービスは?
Kindle
イーブックジャパン
ブックライブ
紀伊國屋書店
リーダーストア
まとめ:ゲイとノンケ、それぞれの葛藤をせつなく描いた名作『どうしても触れたくない』
『どうしても触れたくない』は、ゲイである嶋と、ノンケでありながら嶋に惹かれていく外川、二人の葛藤を描いたBL作品です。
ゲイである嶋は、ノンケの外川が当たり前に抱く「家族への憧れ」を聞き、惹かれてはいけないとブレーキをかけます。しかし、共に過ごすにつれますます惹かれるばかりか、外川も嶋に惹かれてついには告白されてしまい……。
作者のヨネダコウさんの初コミックスでありながら、ドラマCD化、実写映画化などさまざまなメディアミックスもされたヒット作です。人と人との心の機微が繊細に、日常のできごとのなかでリアルに描かれています。
「ゲイが読んでも泣ける」と言われている名作BL。せつない気持ちを感じたいと思った方はぜひ『どうしても触れたくない』を読んでみてください!
