クラブスタッフの緒方は、表情がほとんど変わらないせいで彼女に振られたばかり。クラブ常連のギャル男・サヤの情けない姿を見て思わずクスリときたところで「笑うなムカつく!」と言われ、自分の表情の変化に気付くサヤが気になり始め……。
おげれつたなかさんによる、表情筋の硬いクラブホールスタッフ✕ふわふわギャル男のBLコミック『ネオンサイン・アンバー』をご紹介します。
『ネオンサイン・アンバー』とは?ストーリーや作者
『ネオンサイン・アンバー』は、おげれつたなかさんによるBLコミックです。2017年に新書館ディアプラスコミックスにて刊行しました。
クラブのホールスタッフをしている緒方は、表情がほとんど変わらないせいで「まずそうに食べないで」と言われ、彼女に振られたばかり。楽しいも美味しいも表情に表れづらい自分にやや呆れていた。
そんな中、クラブ常連のギャル男・サヤが酔って吐いているところを助けた緒方。サヤの言うことに思わずクスリと笑ってしまうが、どうせバレないだろうと思っていたのに「笑うなムカつく!」と言われ、サヤのことが気になり始める。
作者のおげれつたなかさんは、数多くのBLコミックを出している人気作家さんです。ストーリーはシリアスからギャグまで多岐に渡ります。
せつなさと笑いを一つの物語の中で織り上げている『エスケープジャーニー』や、完全にギャグに振り切った『ヤリチン☆ビッチ部』。さまざまな魅力を持った作家さんです。
『ネオンサイン・アンバー』の魅力
『ネオンサイン・アンバー』の魅力は、クラブという華やかな舞台で、登場人物二人の影の部分が見え隠れするような切ないストーリーです。
クラブのホールスタッフの緒方は、感情が表情に出ないことを気にしていました。本当は楽しいのに、それが相手に伝わらない。そして、そのことが本当は悲しいのに、それも相手に伝わらない。
対してサヤは、褐色肌のギャル男で見た目は派手に遊んでいる印象を受けます。けれど、クラブにはセックスの相手を探しに来ているわけではなく、ただ「女の子と一緒にいると安心する」という理由。
サヤがなぜ、女の子と一緒にいると安心するのかや、表情筋の硬い緒方の感情によく気付くのかは、彼の過去が関わっています。サヤの気持ちを思うとぎゅっと心が締め付けられるようなせつなさを、ぜひ読んで感じてください。
私が『ネオンサイン・アンバー』を読んだ感想5つ
①無表情のスタッフ・緒方とふわふわなギャル男・サヤ、一見正反対な二人
緒方は長身黒髪のクラブのホールスタッフで、常に無表情。本人に無表情の自覚はなく、美味しいやうれしい、悲しいなど感情自体は豊かですが、それが表情に出ないことが悩みです。それが原因で彼女にも振られ、やるせない気持ちを味わいます。
対するサヤは褐色肌のギャル男で、緒方の働くクラブの常連。いつも女の子を探しては表情をコロコロと変えるサヤに、自分もあれくらい表情豊かなら……と緒方が思う描写もあります。
一見派手で華やかな印象を受けるサヤは、緒方の小さな表情の変化を読み取れるほどよく見ていることが分かります。そして、その理由を「人の顔色伺うの得意だもん」とさみしげに言うなど、人物描写の厚みを感じるのが『ネオンサイン・アンバー』の魅力の一つです。
②朝食を作ってもらうことを通じ、次第にお互いが気になるように
サヤのころころ変わる表情を好ましく思っていた緒方。ロッカーの鍵をなくし、修理代の持ち合わせもなかったサヤに、代金の立て替えを申し出ます。そのお礼に、仕事明けにサヤが朝食を作ってくれることに。
サヤの実家は料理屋で、朝は貸切のその空間で料理をする姿に緒方は見とれます。サヤの作ってくれた朝食は美味しく、思わず黙った緒方の表情を見て「うまそうな顔してた」と笑うサヤ。緒方はどんどんサヤに惹かれていきます。
クラブでサヤにキスしてしまい、はっきりと自分の気持ちに気付く緒方。一方のサヤも、キスをされて以降、緒方を意識してしまう様子で……。コロコロと表情が変わるサヤの、驚きや照れの表情のかわいさが注目ポイントです。
③気持ちが通じ合った二人。けれど、サヤを傷つけてしまう
朝食の最中、ズボンに水をこぼした緒方は、服を借りるため料理屋の二階にあるサヤの部屋へ上がることに。そこで再びキスし、サヤから「ほんとは、男の人が好き」と告白されます。
サヤの服を脱がせながら、頭の中で女性の体と比較してしまう緒方。確かに自分はサヤが好きなはずなのに、それでも……。緒方は途中で手を止め、サヤに「ごめん」と告げます。
それに対してサヤは、怒るでも悲しむでもなく、薄く笑みを浮かべながら「ぜんぜん大丈夫」と言ってくれます。しかし、肥大する罪悪感から逃げるようにその場を後にしてしまう緒方。悩む緒方と、過去を思い出すサヤの描写が印象的なシーンです。
④ずっとサヤを縛っていたものから救ってくれたのは……
それ以来サヤに避けられていたが、元々勤めていたバーが再開することになり、クラブスタッフを辞めることが決まった緒方。最後にサヤの朝食が食べたいとお願いし、料理屋で二人きりの朝食を過ごしていると、酔っぱらいが店に入ってきます。
入ってきたのは、サヤが学生の頃に好きだった先輩の西山。サヤはかつて西山に告白して気色悪いと殴られ、それ以降いじめられて学校にいけなくなった過去を持っていました。
緒方は西山をボコボコに殴り、サヤに「あの時はごめんなさい」と謝罪させます。しかしそれは、自分もサヤの体を見て拒絶するという、同じことをして傷つけた自覚があるから。
「どうすればまた俺を好きになってくれるの?」という緒方のセリフに、サヤはどう答えるのか。サヤの移り変わっていく表情とともに、ラストを楽しんでください!
⑤ドラマCDで更に引き立つ、緒方とサヤ、夜と朝のギャップ
『ネオンサイン・アンバー』はドラマCDにもなっており、緒方を日野聡さん、サヤを中島ヨシキさんが演じています。原作の1話を1トラックとして、単行本描き下ろしのラブラブな後日談もすべて音声化している原作ファンも大満足の構成です。
緒方は淡々と落ち着いていて、けれどそこにセクシーさを感じる声をしておりドキドキしてしまいます。サヤも、夜、クラブでテンション高くキャンキャン喋っているときと、朝、料理屋で落ち着いた様子で喋るときのギャップがまさにぴったり。
後日談はなんと初エッチ。こちらも余すところなく音声化されており、甘い雰囲気と濡れ場にドキドキすること間違いなしですので、ぜひドラマCDもあわせてお楽しみください。
『ネオンサイン・アンバー』が読める電子書籍サービスは?
Kindle
イーブックジャパン
ブックライブ
紀伊國屋書店
リーダーストア
まとめ:表情筋の硬い男の感情に気付くのは、ふわふわした優しいギャル男だけ。『ネオンサイン・アンバー』
『ネオンサイン・アンバー』は、クラブのホールスタッフで、感情がなかなか表情に出ない男・緒方と、クラブの常連でふわふわしたギャル男・サヤのお話です。
自分の表情を読み取ることがうまいサヤが気になり、コロコロ変わる表情に次第に惹かれていった緒方。サヤも本当は男が好きで、二人はそのままうまくいくのかと思いきや、緒方はサヤの体を見てはっきりと男だと意識した途端、続きができなくなってしまいます。
サヤが人の表情を読むのが上手い理由や、ゲイである自分のほうが悪いと考えてしまう原因になった過去。そのわだかまりが次第に解きほぐされていくストーリーです。
作者のおげれつたなかさんは数多くのBLコミックを出している人気作家。美麗な絵もさることながら、その繊細なストーリーに定評があります。
夜のクラブの後の朝食という、穏やかな時間を共に過ごして気持ちを育みながら、すれ違いつつも最後はきちんと幸せになる。優しい気持ちになれるお話を読みたいときはぜひ『ネオンサイン・アンバー』を読んでみてください。
