作品

男娼が小鳥のように暮らす楽園に流れ着いた男のBL『シャングリラの鳥』

妻と別れ、離婚調停中の男・アポロ。金が必要だった彼は、男娼ばかりを扱う娼館「シャングリラ」でスタッフとして働くことになる。そこで出会った男娼・フィーはさばさばした男だったが、ある日、何かスイッチが入ったように客の前で暴れ始め……。

男娼たちが小鳥のように暮らす楽園「シャングリラ」を舞台にした、ノンケ✕男娼のBL『シャングリラの鳥』をご紹介します。

『シャングリラの鳥』とは?ストーリーや作者

『シャングリラの鳥』は座裏屋蘭丸さんによるBLコミックです。2017年から『Canna』にて連載が開始され、2019年にコミックスとして1巻を刊行しました。

妻と別れ、離婚調停中の男・アポロは、男娼ばかりを扱う娼館「シャングリラ」でスタッフとして働くことになる。アポロの仕事は「試情夫」と呼ばれ、男娼たちが客を取る前に彼らを優しく、愛しながら体と心の準備をすることが職務だ。

アポロの教育担当として充てがわれた男娼・フィーは褐色の肌に短髪のさばさばした男。子供の頃から男娼をしていた彼はほぼセックス依存症のような状態だが、普段はさっぱりした性格だ。しかしある日、客を前にして暴れだしたフィーを、アポロは止めることになる。

作者の座裏屋蘭丸さんは、これまで多くのBLコミックを出している人気の作家さんです。まるで外画のような美しい絵と、SFやファンタジーを本当に存在するのではと思わせるほどリアルに描く重厚なストーリーが魅力です。

『シャングリラの鳥』の魅力

『シャングリラの鳥』は異国情緒漂う娼館「シャングリラ」で起こる、外からやってきた男・アポロと男娼・フィーのお話です。それぞれの過去が少しずつ描かれていくなかで、心に抱えた傷が浮き彫りになっていきます。

舞台は、男娼ばかりを扱う娼館・シャングリラ。南国のリゾートのような広々としたその場所は、一般の娼館のもつアングラな空気は微塵も感じさせません。開放的な雰囲気で性を謳歌する男たちの姿はまさに「小鳥」。

それぞれの登場人物が持つ過去の傷のほの暗さと、それとは正反対に明るく美しい理想郷のような娼館・シャングリラ。次第に明かされていく過去のストーリーと、それを包む明るく享楽的な雰囲気のギャップが、『シャングリラの鳥』の魅力です。

私が『シャングリラの鳥』を読んだ感想5つ

私が『シャングリラの鳥』を読んでオススメしたいと思ったポイントを5つご紹介します。

    ①物語の舞台は南国の楽園の如き娼館「シャングリラ」
    ②左手の薬指に指輪の跡を持つ男・アポロ
    ③アポロの指導役は短髪に褐色肌の男娼・フィー
    ④暴れるフィー、そしてアポロの本来の姿。動き出す物語
    ⑤ドラマCD化もされ、ますます目が離せない!

①物語の舞台は南国の楽園の如き娼館「シャングリラ」

『シャングリラの鳥』の舞台は、まるで南国の楽園のような開放感のある娼館「シャングリラ」。本土との連絡船は1日1便限りの島にあり、南国の植物生い茂る美しい庭を抜けた先に、リゾートホテルのような建物があります。

オーナーが最優先するのは客ではなく、あくまでここに住まう男娼である「小鳥たち」。一般的な娼館と一線を画すのは、男娼たちを花を愛でるように愛し、ケアをする「試情夫」たちの存在です。

客を取る前に男娼と試情夫は二人でシャワーを浴びながら睦言を囁き合い、優しく体を開いていきます。けれど、試情夫と男娼の間には絶対のルールが。「男娼をイかせないこと」「挿入行為はしないこと」、そして「絶対に恋に堕ちないこと」。

この「試情夫」として雇われたアポロが本土からやってくることで、物語は始まります。

②左手の薬指に指輪の跡を持つ男・アポロ

アポロはシャングリラのオーナーに声を掛けられ、試情夫として働くためにこの島にやってきました。元々ストレートの彼にはキツいかとも問われましたが、金が必要との理由で試情夫の仕事に就くことを了承します。

しばらくは一人の男娼の専属として仕事を覚えていくことになったアポロは、褐色肌に短髪の男娼・フィーの専属になることに。まるで女性を抱くときのように、電気を消し、優しく愛撫しながら恐る恐るフィーの体を開いていくアポロに思わず笑ってしまうフィー。

体に触れる左手の薬指には、くっきりと指輪の跡が。聞けば、妻と別れ、人を殴って裁判沙汰になっているというアポロ。朴訥で優しげな雰囲気のアポロの中にある、他人を殴るほどの激情とは?

ぜひ読んで確かめてみてください。

③アポロの指導役は短髪に褐色肌の男娼・フィー

試情夫の仕事を覚えるため、しばらくは一人の男娼の専属となることが決まったアポロ。担当になったのは、褐色の肌に短髪の男娼・フィーでした。

フィーはかつてストリートチルドレンで、その頃から男娼をしており、周りからは「セックス依存症のようなもの」と言われるほど。けれど普段は気さくで、新たにシャングリラにやってきたアポロにも真っ先に話しかけました。

シャングリラにいる男娼は、この仕事を好きでやっている者だけ。だからシャングリラは、悲壮感のない楽園のような娼館なのです。

しかし、その中でフィーが秘め事のようにアポロに明かしたのは「人を殺したかもしれないんだ」という秘密。それはすぐに冗談のようにごまかされますが……。今後の展開に注目です。

④暴れるフィー、そしてアポロの本来の姿。動き出す物語

ある日、フィーはシャングリラのホールで客を殴りつけ、怒鳴りながら暴れだします。誰も手を付けられないほど荒れるフィーを肩に担ぎ、外へ連れ出すアポロ。かつてのトラウマから、フィーには触れられたくない地雷のようなものがあることを知ります。

一方のアポロも、大学時代の友人で今は離婚調停の弁護士をしてくれているダグラスが本土からやってきました。フィーはダグラスと話しながら、自分がアポロに抱いている印象とダグラスが語るアポロがあまり結びつかず、不思議に思います。

とても誰かに入れあげたりするようなタイプには見えないアポロ。しかし、本当は恋愛に能動的な男で、情熱的で、愛されるより愛したいタイプだとダグラスは言います。もし、その「本来のアポロ」に触れることができたら――?

1巻の終盤から一気に動き出す物語。二人がどうなっていくのか、ぜひ読んで確かめてみてください。

⑤ドラマCD化もされ、ますます目が離せない!

『シャングリラの鳥』はマリン・エンタテインメントからドラマCD化もされており、フィーを中島ヨシキさん、アポロを松田健一郎さんが演じています。1巻は2枚組という豪華な作りで、初回版には限定トラックも収録。

ドラマCD特設サイトも作られていますので、ぜひチェックしてみてください!

https://www.marine-e.net/sp/shangri_la/

『シャングリラの鳥』が読める電子書籍サービスは?

Kindle
イーブックジャパン
ブックライブ
紀伊國屋書店
リーダーストア

まとめ:楽園のような娼館・シャングリラで交錯する男たちの秘密。『シャングリラの鳥』

『シャングリラの鳥』は妻と離婚調停中の朴訥な男・アポロと、娼館「シャングリラ」の男娼・フィーのお話です。男娼たちを愛し、ケアする「試情夫」として雇われたアポロは、しばらくフィーの専属として仕事を学ぶことに。

しかし、アポロは離婚に際し人を殴って調停中、フィーは客の前で暴れて殴る蹴るの暴行を加えるなど、自分では抑えられない暴力性も。それぞれの本当の姿は一体どこにあるのか、徐々に過去が明らかになっていく重厚なストーリーが楽しめる作品です。

作者の座裏屋蘭丸さんの、まるで海外ドラマを彷彿とさせる美麗なタッチもこの作品をより”楽園”めいたものにしています。美しい画で、ドラマのようなぴりっとした空気感をもった作品を読みたいときはぜひ『シャングリラの鳥』を読んでみてください!